大阪大学大学院で宇宙物理学の研究をしながら、個別指導の先生をしています。銀河の形成シミュレーションと、中学生の数学の授業——傍から見ると、ずいぶん遠い話に聞こえるかもしれません。でも私の中では、どちらも同じ一本の線でつながっています。
それは「なぜ?を問い続けること」です。
銀河のシミュレーションから、中学数学へ
大学では物理学を専攻し、大学院では宇宙物理——特に銀河の形成と進化をシミュレーションで研究しています。星がどう生まれ、銀河がどう育ち、ブラックホールのフィードバックがどう宇宙の構造を変えるか。そういうことを、スーパーコンピュータ上で数値計算しながら探っています。
研究の世界で指導教員からよく言われた言葉があります。「なぜそうなるかを言葉で説明できないなら、まだわかっていない」。どれだけ数式を扱えても、現象の本質を言語化できなければ研究にならない。その感覚が、今の私の指導の根本にあります。
公式を覚えることと、なぜその公式が成り立つかを理解することは、まったく別のことです。
駿台・早稲田アカデミーで気づいたこと
大学時代から、駿台や早稲田アカデミーで高校生への理科・数学指導を続けてきました。大手の進学塾ですから、生徒のレベルも目標もさまざまです。その中で強く感じたのは、「手順は覚えているのに、少し条件が変わると詰まる」という子の多さでした。
彼らに共通していたのは、「なぜその解き方をするのか」という根拠を持たずに、パターンだけを暗記していることでした。物理であれば現象が見えていない。数学であれば式の意味が分かっていない。だから初見の問題に出会うと、思考が止まってしまう。
個別指導では、その「止まる瞬間」に立ち会うことができます。どこで詰まっているのか、なぜ詰まるのかを一緒に探ることができる。それが、私が個別指導にこだわる理由の一つです。
オンラインでも「なぜ?」を一緒に追いかけます
小学校の算数まで戻ったこと
以前、中3の夏から数学を担当した生徒がいました。定期テストで30点台が続いていて、本人も保護者の方も相当追い詰められた状態でした。最初に話を聞くと、分数の計算があやふやで、文字式の意味もよく分かっていなかった。中3の問題どころか、中1の内容から、ときには小学校の算数まで遡る必要がありました。
深夜に彼から電話がかかってきたことがありました。模擬試験の結果が思うよりずっと悪くて、もう無理かもしれないと。受験期の中3にとって、それは本当につらい夜だったと思います。電話口で一緒に気持ちを整理して、「今できることをやるだけだ」という話をしたのを覚えています。
そこから彼は諦めませんでした。土台を一つひとつ積み直しながら、最後まで取り組み続けた。定期テストの数学は37点から87点まで伸び、第一志望の高校に合格することができました。合格の知らせを聞いたとき、純粋に嬉しかったです。
「できない」のではなく、「まだ土台が整っていない」だけのことが、ほとんどです。どこから積み直せばいいかを一緒に探すことが、私の仕事です。
ロケットを作りながら、理科を教える
研究と指導の他に、ロケット開発にも携わっています。高高度気球実験やハイブリッドロケットの電装・回収システム設計、成層圏での放射線計測——宇宙に物を飛ばすために、物理・化学・電子工学・プログラミングを実際の手で扱っています。
生徒に「物理って何の役に立つの?」と聞かれたとき、私は具体的に答えられます。気圧の変化を計算して飛行高度を推定するとき、加速度センサーのデータを解析して軌道を再現するとき——教科書の数式が、そのまま現実の問題を解いている。それを自分の経験として話せることは、指導の上でも大きな意味を持つと思っています。
「できない」と自分を決めつけないでほしい
理系が苦手、数学のセンスがない、物理は自分には無理——そう思い込んでいる子が、正しい手順で土台を積み直すだけで、見違えるように問題が解けるようになる場面を、私は何度も見てきました。
少し方法を変えるだけで、見える景色が変わることがあります。「どこからわからなくなったか」を一緒に探すところから始めます。悩んでいる方は、一度話しかけてみてください。

